奈良の偉人

西岡常一(にしおか つねかず)・奈良の偉人

奈良県生駒郡法隆寺村西里生まれ。

1908(明治41)年9月3日-1995(平成7)年4月11日 87歳

法隆寺、薬師寺、法輪寺を復興させた「最後の宮大工」

まずは「古代建築修理の功労者・寺大工棟梁 西岡家三代(県政だより奈良)」より。

『 明治維新期を迎え、寺領が無くなり収入の道が閉ざされた南都の古い寺院は急速に衰退窮乏化した。そして、堂舎の修理はおろか僧侶は生活にも追われるようになり、多くの宝物は寺外へ流れ、由緒ある建物は荒れるに任せる状態だった。そんな中で、伝統文化の重要性に気付いた明治政府は、いくつかの対策を立てた。明治13年(1880)古社寺保存金制度、明治30年(1897)古社寺保存法を制定した。なかでも緊急の課題は古建築の修理であった。

 これらの政策の結果、日本の古代建築が集中している奈良県では各地で修理が始められた。この修理を担ったのが、大学で建築学を学んだ技師と伝統的な寺大工である。当時奈良県には関野貞・天沼俊一など新進気鋭の建築技師がおり、建築史研究上大きな業績を残している。

 寺大工の伝統技術は、寺の衰退とともに崩壊に瀕していたが、明治の後半から昭和にかけて主に法隆寺の大規模な解体修理工事に従事し、伝統技術を近代から現代へと伝えたのが、大工棟梁西岡家の常吉・楢光・常一の三代である。

 西岡家は代々法隆寺の西里に居住し、高い技術と組織をもっていた法隆寺大工の流れを受け、明治になって棟梁家になった。嘉永6年(1853)に大工伊平の長男として生まれた初代常吉は、寺の衰退で職人も廃業するなかを、父に従い寺大工の道を貫いた。18歳の時に父伊平を失った常吉は、苦しい時期を経て明治17年(1884)の法隆寺西園院持仏堂の修理の時にはじめて大工棟梁となった。古社寺保存法の制定の後は法輪寺三重塔、法隆寺上御堂、法隆寺南大門の修理をしている。しかし、昭和9年(1934)に国家事業としての法隆寺国宝保存事業がはじまる前年に81歳で亡くなった。

 第二代の楢光は明治17年(1884)に額田部(大和郡山市)の農家に生まれ、23歳で常吉の次女つぎと結婚して大工職についた。そのためかなり苦労したようである。しかし法隆寺国宝保存事業では楢光が大工棟梁として中心的な役割を果し、法隆寺食堂、大講堂、絵殿舎利殿、伝法堂などの解体修理に従事した。棟梁を辞めた後も修理を見守り、昭和50年(1975)に91歳で亡くなった。

 第三代の常一は明治41年(1908)に楢光の長男として生まれ、早くから祖父に大工職を見習った。法隆寺昭和大修理のはじまる昭和9年から終了する昭和30年(1955)まで法隆寺礼堂や絵殿舎利殿、大講堂、金堂や五重塔の修理に従事した。昭和24年(1949)の金堂火災では消火に当たり、その後修理の大工棟梁になっている。昭和30年、法隆寺の大修理の終了後、さらに法輪寺三重塔の再建や薬師寺金堂・西塔の復元の棟梁を勤め、伝統的寺大工の技術保持に努力した。平成7年(1995)4月に86歳で惜しまれつつ死去した。 』

 西岡常一は、大正13年(16歳)生駒農学校卒業。大正14年(17歳)大工見習から宮大工、棟梁の道に進む。昭和9年(26歳)から始まった「昭和の大修理」と言われる法隆寺の解体修理を手がける。1971(昭和46)年63歳の時、薬師寺復興の大工棟梁。1976(昭和51)年68歳の時、竜宮造りといわれる金堂を復興、続いて西塔、中門、玄奘三蔵院などを完成させ、回廊や講堂の復興に尽力。さらに、法輪寺 三重塔の再建の棟梁を務める。

 西岡常一は飛鳥時代の古代工法で大伽藍を造営することのできる「最後の宮大工」といわれた。

 常一は、「木」にこだわり、「伝統的な大工の技術」を後世に残し、伝えることにこだわり続けた人であった。ただ伝統的な木造建築の修理・修繕、再建を志しただけではない。法輪寺の三重塔の再建にあたって、「外形の復原ではなく内部の構造・構架も飛鳥の様式にというのが、私どもの考えで、飛鳥の工人の足跡をそのまま踏み行っておく」ことをめざしたという。

 常一は、できるかぎり創建当時の素材、技術によって伝統木造建築を復原しようとした。メンテナンスにあたって、鉄やコンクリートを使うことを嫌い、木にこだわったのも、「飛鳥の工人の足跡」を伝えたかったからだろう。

「木の文化は自然を守る文化からしか生まれない。木を生かすには自然を生かさねばならず、自然を生かすには、自然の中で生きようとする人間の心がなくてはならない。その心とは永遠なるものへの思いでもある。」
  

宮大工、西岡常一棟梁の世界・法隆寺iセンター(奈良県生駒郡斑鳩町法隆寺1-8-25)

関連書籍

 
  
人気ランキング応援クリック!

関連記事

  1. 村田珠光(むらた じゅこう)・奈良の偉人
  2. 富本憲吉(とみもと けんきち)・奈良の偉人
  3. 土倉庄三郎(どくら しょうざぶろう)・奈良の偉人
  4. 中村直三(なかむら なおぞう)・奈良の偉人
  5. ふるさと100話<62> 棚田嘉十郎/溝辺文四郎(奈良県奈良市)…
  6. 武野紹鴎(たけの・じょうおう)・奈良/大阪の偉人

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

ピックアップ記事

  1. 華岡青洲(はなおか せいしゅう)| 和歌山の偉人

江戸の偉人たち

PAGE TOP